実践編

2.山に着いたらとにかく「観る」!
(観天望気)


観天望気とは空を見て天気の予想をすることである。山に着いたら天気を予想する材料はこのように「ナマ」のものなのだ。頭に入れてきた予報をうのみにするのではなく、観天望気により確認したり修正していくようにしたい。2.〜4.は厳密には「観天望気」とは言わないかもしれないが、とにかく使えるものは何でも使うのである。


1.雲で観る
雲は観天望気の格好の材料である。雲の種類は多く、呼び名も専門的なものから小粋なものまで、これまた様々で覚えるのは大変なのだが、ここでは特に重要な雲達をよく使われる呼び名で紹介することにする。

*遠方から見る場合(晴天下または見通しのいい曇天下での観天望気)
名称 (雨雲には〇印) ポイント 存在からわかること
1.積乱雲背が高い 特に背が高い場合は上空に寒気あり 低気圧関連の場合は東に進む 夏は現在地にも発生の可能性あり
2.乱層雲低空で雲に厚みがあり、黒っぽい 弱い前線がある 多量の水蒸気が入っている 低気圧関連の場合は東に進む
3.積雲ほぼ同じ高さに点在している 水蒸気が入っているが、大気は比較的安定している
4.巻雲空を南から北に動く 低気圧(気圧の谷)が接近している
5.レンズ雲 2段以上重なっていることもある 風上の稜線は強風地帯である 悪天の前兆である
6.ヒコーキ雲 形がすぐ崩れていく場合は大気が不安定である
7.雲海 逆転層ができており大気が安定している























なんだかわかんないって?うーむ、やはり。



*直下から観る場合
天候/空 ・・・・雲/対応

短時間強雨 突風 降ひょう 雷/暗い
・・・・・積乱雲/一刻も早く安全な場所へ行く。特に落雷に注意が必要。夏の夕立の場合は1時間程度で収まるので焦らないこと。寒冷前線通過の場合は通過後気温が急激に下がるため、雨に打たれた後は特に体温を奪われやすいので注意。

持続時間の長い中程度の雨/暗い
・・・・・乱層雲あるいは規模の大きい積雲/雨自体はたいしたことはないが、積乱雲が発達する可能性があるので注意。 低気圧に伴うものの場合は、今後寒冷前線通過まで悪天が続くことを頭に入れ、寒冷前線通過時刻を推定しておくこと。

持続時間の短い中程度の雨/遠方は明るい
・・・・・積雲系の雲/この雲がなくなってしまえば晴天になることが多い。



2.風で観る
風は体で感じるものであるが、目にも見えるのだ。木の揺れかた、砂ぼこりの飛び方、ガスの流れ、雲の流れで風向や、おおざっぱな強さが判る。ただし、樹林帯では樹林の影響を受けすぎるので、森林限界上の稜線でのみ有効である。

風と雲の関係
観るポイントはまず風の強さであり、 風の強さ=上昇流の強さ、である。
もし、水蒸気の入る風向であれば、風の強さ=水蒸気量の多さ、と考えても差し支えない。

大きいスケールの現象との関係
一定の風向・風速が持続している場合は、気圧配置がある程度判る。たとえば南風の場合はその地点を中心に「南高北低(この場合普通は北に低気圧がある)」、西風の場合は「西高東低」である。ただし、実際に吹く風は局地風や地形とのコンビネーションで決まるので、注意しなければならない。さらに、少なくとも数分間は風の動きを観る必要がある。風向は常に一定ではなく、平均的なものを考えねばならないからである。

突風が吹いた場合
積乱雲が存在している可能性があり、要注意である。

強風が吹いている場合
低気圧あるいは気圧の谷が接近している可能性があり、今後の天気の動向に注意せねばならない。ただし、冬の高山稜線では強風が当たり前で、当てはまらない。

風向が急変する場合
前線の通過時に起こる。積乱雲ができやすい状況であるので注意が必要である。


3.気温で観る
気温は「感じる」ものであるが、小さい温度計を携帯している人もよく見かけるから「見る」ものかもしれない。ところで、高度計付きの腕時計は便利だが、あれに付いている温度計は体温を感知してしまって全く役に立たない。何とかならないであろうか。まあ、気温は感覚的に「暑い」「寒い」でいいと思うのである。重要なのは「普通に比べて」なのである。よって、温度計より感覚を優先させるべきなのだ。たとえば、1月の穂高稜線上で日中−5℃といえば、冬山に行き慣れている人は「暑い」と感じるはずである。そう思えないヒトはきっと温度計を見ても、その温度が何を意味するか分からないであろう。気温は目盛りではなく、感覚的な「暑さ」「寒さ」を重視する!これに限る。
さて、暑く感じたり寒く感じたりするのには当然理由がある。

暑い
南よりの風(水蒸気)が入っている、あるいは北よりの風が弱まっている。

寒い
北よりの風が入っている、あるいは南よりの風が弱まっている。

ということで、これが分かっていれば十分である。


4.その他のモノで観る
しつこいようだが、何だって使えるものは使うのである。ついでに使えないものだって使うのである。

ガス
ガスがしたから湧いてくれば上昇流があり、さらに悪天。ガスが降りていけば下降流があり、晴れる。「降る霧は照る霧〜」とかいう諺もある。

星空
星を見るのが好きなのだが、大気が不安定なときはキラキラが激しいのである。ちなみにキラキラしない星がたまにあるが、それは木星や土星などの惑星である。「あれが土星ですよ」と教えたら「ほんとだ!輪っかがあるねえ。」とのたまった人がいたが、あなたの目は望遠鏡ですか?

ヘリ
ヘリは気象情報を入手して飛んでいる。山岳地帯のヘリはかなり無茶をするが、一般的に気象条件の悪いときには飛ばない。よって、ヘリが飛んでいないということはかなりヤバイ(単にお休みの日かもしれない)、あるいは結構怪しい天気でもヘリが飛んでいれば当分大丈夫(ホントにそうかなあ?)。


ガスってきたり雨が降る直前にはライチョウが「グエーグエー」と鳴く。元々そんな声なのであって、雨用というわけではない。かなり正確な予報となるのだが、あまりにも直前であるためさっぱり役にたたない。





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