基礎編

6.「小さいスケールの現象」


ここでは頭上の天気に直接関わる現象と、それによって起こる天気について述べる。現象のスケールが小さいとどうなるかというと、たとえば「隣町では雷雨になっているのに、ここでは晴れている」「たった1時間のうちに雨が降って、晴れて、また雨が降った」「庭でのんびりと寝っころがっているすぐ前を竜巻に巻き込まれた自分の家が飛んでいく、なんだかカナシイ」「晴れているのに兄の頭の上だけに雨が降っている、ザマミロ」のように色々ある。
さて、「スケール」という言葉をもう一度考えてみる。たとえば風にも大きいスケールのものと小さいスケールのものがある。「低気圧が引き込む南風」は大きいスケールである、これに対しどこかの山でその南風が当たってできた上昇流は「小さいスケール」のものである、といったカンジである。これは同じものを「大きく見る」のと「小さく見る」のとの違いとも言えるし、「大きいスケール」のものから「小さいスケール」のものが生み出されたとも言える。この感覚を理解して欲しい。

1.対流雲
強い上昇流や上空の寒気によって上に発達した雲で、特に背の高いものを積乱雲(入道雲とも呼ばれる)という。ここでは特に危険な現象を引き起こす、この積乱雲について述べる。

積乱雲ができやすいのは主に「寒冷前線上」「暑い日の午後」
であり、また、台風に伴う雲も積乱雲である。そして、

積乱雲は「強雨」「落雷」「突風」を引き起こす可能性
があり、背が高いほどその度合いは激しい。また「ひょう」が降ることもある(夏でも)。

最も発達したものは上端が平坦で流れている。これが最強である。なんと成層圏まで達しているのだ。

積乱雲の発達が抑えられることがある。ある高度に逆転層(後述)というものがあるとそれ以上には発達できない。

2.層状雲
これは本来「大きいスケール」の雲だが、対流雲と対比させるためここで述べる。水平方向に広がった雲の総称で細かく分けると色々あるのだが、かなりおおざっぱに言うと、どれも雨が降ったとしても比較的穏やかであるといえる。低気圧の接近時には各種の層状雲が次々に現れるので、ずっと見ていれば
色々見られて割と面白いし、どんな雲が出るとどれくらいで天気が崩れてくるのかが分かるようになってとても便利である。が、調子に乗って見ているとそのうち雨が降り出すので注意したい。空が一面暗くなってくるとそれが乱層雲というヤツで、その辺で切り上げるとよいだろう。とりあえず、真っ先に現れて
高い空を南西から流れてきて低気圧の接近を知らせる巻雲
だけは知っておきたい。


3.「小さいスケール」の上昇流
今まで述べてきた「上昇流」には「低気圧中心付近の上昇流」「前線付近の上昇流」「上空の寒気による上昇流」などがあったがこのうちの「山につきものの上昇流」がこれにあたる。あともう一つ代表的な上昇流の起こり方を書く。

別方向からやってきた風同士がぶつかると上昇流が起こる。
これは低気圧中心付近でも大きなスケールで起こっているが、小さなスケールでも起こるということである。風(空気と考えてもよい)というと実体のなさそうなものに思いがちだが、そんなことはない。ぶつかって消えてなくなるわけにはいかず、地面に溶け込むわけにもいかないので上へ逃げるのである。双方の風が強ければ強いほど、そして正面衝突に近いほど上昇流が強くなることは言うまでもない。ビルの谷間の交差点では車同士もぶつかるが、ビル風同士もぶつかって強い上昇流が起こっている。また、寒冷前線上では小さく見るとこの状況になっているため、積乱雲が発達するのである。
実はこの小さなスケールの上昇流は大きなスケールの上昇流とは比べ物にならないほど強いため、全国的に日本晴れのとき、つまり大きく見て上昇流が起こっていないときでも、何らかの理由で風がぶつかっている地点があればそこだけ雷雨になっていてもおかしくないのである。


4.局地風
特定の狭い地域で特徴的に吹く風のことである。たとえば赤城山の麓には冬季限定で乾燥した強い風が吹き、これは「赤城おろし」または単に「からっ風」と呼ばれている、とこういったものである。他にも「六甲おろし」「比叡おろし」など「ナントかおろし」というのが多いようである。これらは山から下りてくる風であるのでそういう名がつけられている。ただし「しらすおろし」「なめこおろし」などは局地風ではなく、居酒屋風である。
違うパターンでは海岸で当たり前に吹く海陸風というのも局地風である。これにも各地で名がついている。海、山とも、生活に密着している風には名前がつけられているようだ。山ではもっと狭い範囲で山谷風というものがあり、夜は山から谷へ(山風)、日中は谷から山へ(谷風)となる。さらに、山では「どこそこはいつでも風が強い」という場所があるものである。その風も局地風といえるし、「山につきものの上昇流」も一種の局地風であるといえる。
以上から分かるように、局地風は地形を反映するものである。これをよく知ることが、天気の予想をより正確なものにするはずである。

山の天気は地形を重視



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