基礎編

4.気象のメカニズムとスケール


気象を考えるには「スケール」と言う考え方を用いる。ここではそれをワタクシなりに簡略化したものを覚えてもらいたい。まず、よく出てくる言葉の区分をする。一つ一つがどういうモノか分からない人はこの後に書いてある説明を見ながら考えてもいいが、たとえて言えば「食べ物」「果物」「みかん」の違いが分かるか?というようなことである。そして、「魚」がどれと同じ種類か分かれば良いのだ。さて、納得できるであろうか?

たとえば強い雨が降っていたとする。そのプロセスの一つに、「寒冷前線」付近で「雨」が降っており、所々で「背の高い雲(積乱雲)」が発生して「強雨」となっている、というのが挙げられる。気象現象は必ずこうやってブロックに分けて考えるのである。ブロックごとの状況を知るために資料や観天望気があり、ブロックのつながりを考えるために知識が必要となる。どちらも多ければ多いほどいい。なぜワタクシが「予報屋より正確な山の天気は可能」と断言するかというと観天望気、地形、経験等の資料が増えるからであり、当然の話なのだ。とにかく、予想を立てる作業は

「大きいスケールの現象」「小さいスケールの現象」「大まかな天気」 「細かい天気」に区別し、その関係を知り、大きい方から小さい方へ考えていく
のが基本ということである。ここで言う「大きいスケールの現象」とは表左上、「小さいスケールの現象」とは表右上、「大まかな天気」は左下、「細かい天気」は右下のような内容である。資料の見方やつながりの考え方については実践編に書くので、ここではとにかく区分のされかたに慣れてほしい。ちなみに

大きいスケールの現象は、水平距離的に規模が大きく時間的にゆっくりと変化(発生、移動など)し、小さいスケールの現象は、水平距離的に規模が小さく短時間で変化(発生、移動など)する
ことを理解すると「スケール」という言葉のイメージがより湧くかもしれない。
普通の人が「天気図だけ見ても天気が当たらない」理由を説明しよう。天気図というのは「大きいスケールの現象」の状況を知るためのものだが、ブロックのつながりはおろか、「小さいスケールの現象」のことをすっ飛ばして考えようと言うのだから当たり前なのである。しかし、「低気圧の周りはぜんぶ雨」「高気圧の周りはぜんぶ晴れ!」と明快に信じているヒトも未だに多く、またそんなのに限ってただそれだけの根拠で「今日はこれから雨だ、皆さん下山した方がいい」などとしたり顔、同宿の罪の無い登山者達はみな下山…あーあ。ワタクシはひとりさんさんと降り注ぐ太陽の下ずいぶんと静かな稜線歩きをさせてもらった経験がある。ま、この場合は知らぬが仏であるからいいが、逆の場合ヘタをすると事故が起こるので、このワタクシでさえ黙ってるんだからあまりカッコつけん方がええと思うよ。

「細かい天気」の可能性
「小さいスケールの現象」から「細かい天気」を判断する(たとえば「背の高い雲」ができそうだが、では「雷」はどうなるか)ということについては予報屋でも「可能性」を示すのみである。確率で表したり、「雷雨の恐れがあります」のような言い方をする。これは、過去の統計を根拠にしているからであり「こんなカンジの日はけっこー鳴るっけなあ、よっしゃ70%!」的なものなのだ。コンピューターがその作業をしていると考えればいい。また、少しでも可能性があれば「事故ってからごたごた言われるとかなわんからとりあえずカミナリ一丁!あ、確率多めでね」てなカンジの手心も加えてある気がしてならない。しかしこれだとハズれることが多く(現実にそう)、信用を失い、やがてゴルフ場で犠牲者が出る…。予報はこの戦いである。我々はその辺のところを理解して命を落とさないようにしたい。可能性があるとき、さらに細かく判断する方法もあるが、一般的ではないし完全なものでもない。




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